夏になるとよく目にするのが「夏バテ」という言葉。
しかし、「夏に暑さで倒れる病気でしょ?」とざっくりと理解をしていても、実際夏バテがどのような病気なのかを、詳しく説明できる方は少ないのではないでしょうか。
今回は夏バテが一体どのような病気なのか、またどのようなことが原因で起こってしまうのか、適切な対処方法は何なのかなど、夏バテについて詳しく解説いたします。
夏バテとは?
日本の夏は高温多湿が続きます。この環境に体が順応できず、全身のだるさや倦怠感、食欲不審などの症状が現れることを総称して「夏バテ」と言うのです。
いわゆる夏の高温多湿によって現れる不調の総称が「夏バテ」です。暑気あたりや夏負けなどとも言われることもあります。
夏バテは「夏に現れる不調の総称」であるため、その患者数がどの程度いるのかを把握することは難しいと言えますが、気象庁の統計により、年々平均気温が上がってきていることや、厚生労働省が毎年行なっている「人口動態統計」により、年々熱中症での死亡者数が増加していることから、夏バテになってしまう方も年々増加していることが予想できます。
症状から見る夏バテ
夏バテは不調の総称であることから、人によって様々な症状が現れてきます。
主に全身のだるさや倦怠感、疲れやすさ、食欲不振、入眠障害や気力の喪失などが夏バテの症状として挙げられます。
また、この他にも吐き気や頭痛、めまい、下痢、便秘、立ちくらみ、微熱、喉の痛みなどの症状を伴うこともあります。
さらには、この夏バテが原因となって、夏風邪や、うつ病などの精神疾患、に発展してしまう可能性もありますので、夏に体のだるさや全身の倦怠感を感じたら十分に注意が必要です。
熱中症もいわゆる広い意味で「夏バテ」の一種と言えますが、正確には夏バテと熱中症は分けた方が良いと言えます。
なぜなら、熱中症は体温が一気に上昇し、意識が朦朧としたり、高熱が出たり、素早い対処を行わないと命に関わるからです。
一方で、夏バテは徐々に倦怠感や疲れ、食欲不振などから夏風邪やうつ病といった精神疾患に繋がっていく特徴があります。
つまり、熱中症は程度によってご自身で対処されるのは危険な場合があるのですぐに医療機関などで適切な処置を施す必要がありますが、夏バテについては日頃からの予防や、しっかりとセルフケアを心がけることで改善していく可能性があるのです。
なぜ夏バテしてしまうのか?その原因とは?
夏バテの原因は主に、室内と室外の「温度差」と、発汗による水分、ミネラル不足が原因で起こります。
私たちの体温は自律神経の働きによって、体温が上がりすぎた時には発汗によって体温を下げ、体温が下がりすぎた時には筋肉の震えや血管の収縮、鳥肌などで体温を上げるといった具体に常に一定になるように調整されています。
しかし、夏にはエアコンを効かせた涼しい部屋と猛暑の室外の出入りが繰り返されることで、自律神経のバランスが乱れてしまいやすくなるのです。
この自律神経は体温調節以外にも、胃腸の働きや、睡眠、など私たちの体の様々な機能を担っています。そのため、自律神経が乱れてしまうことによって、先ほどご紹介した全身のだるさや倦怠感、疲れやすさ、食欲不振、入眠障害や気力の喪失、吐き気、めまい、立ちくらみ、微熱、喉の痛みなど挙げていけばきりがないほどの症状を引き起こしてしまいます。
また、夏は発汗によって水分を失いやすい季節です。また汗では塩分といったミネラルも出ていくので、こまめな水分補給、塩分などのミネラル補給をしていないと、脱水症状のような症状が出てきてしまいます。
脱水症状も自律神経の乱れの原因となってしまいますので、水分・ミネラル不足によっても先ほどご紹介した症状の原因となってしまう可能性があります。
夏バテの危険度をチェック!
夏バテは自分の気づかないところでじわじわと進行していきます。夏バテになりやすい生活を送っていないかどうかを次のチェックリストで確かめてみてください。エアコンが効いた涼しい部屋で過ごすことが多い
- 水分は1日2ℓ以下しか取らない
- 夜更かしをよくしており、寝不足が続いている
- 火を使わない料理ばかり食べている
- 野菜をあまり食べない
- 湯船にあまり浸からずに、シャワーだけで済ましてしまうことが多い
- キンキンに冷えたビールをよく飲む
- 運動をあまりしない、家でダラダラ過ごすことが多い
- 食欲がなく、あまり食べない
- 冷えたジュースや炭酸飲料をよく飲む(1日1ℓ以上)
もし上記のチェックリストで3つ以上当てはまる方は、夏バテ予備軍と言えます。
もし夏バテしてしまったら?効果が期待できる対症療法!
先ほどご紹介した「夏バテチェックリスト」を見ていただくとわかる通り、夏バテの原因は全て私たちの「食事」「飲み物」「睡眠」など、日常生活の中に数多く潜んでいることが分かります。
例えば、「キンキンに冷えたビールをよく飲む」ことは、ビールの利尿作用によって発汗だけではなく尿からも水分が奪われやすくなってしまうため、またキンキンに冷えたビールによって体全体が冷え、胃腸などの機能低下に繋がってしまいます。
このような日常の生活をしっかりと改めていくことで夏バテになりにくい生活を送る、それが私たちが夏バテに対してできる一番の対症療法と言えます。
特に、夏バテ対策に効果が期待できるのが「食事」と「飲み物」です。この2つの項目についてしっかりと夏バテ対策を行なっておくことで、夏バテを未然に防ぐ効果が期待できます。
夏バテに良い食事のポイントとは?
夏は暑さや冷たい飲み物によって、食欲が落ちてしまいがちな季節です。
これは、栄養素が不足しがちな季節とも言い換えることができます。
そのため、まずは少ない量であっても栄養がしっかりと含まれたバランスの良い食事を1日3食摂るということが大切です。
もし、どうしても食欲がなく食べられないという時には、香辛料(しょうが、唐辛子など)や薬味(ねぎ、ミョウガなど)などをトッピングすることで辛味によって食欲を促す効果が期待できます。
特に疲労回復に必要不可欠なビタミンB1、そして塩化ナトリウムやカリウムといったミネラルが夏は不足がちになりますので、それを含む食材を積極的に取り入れていくことが大切です。
また、不足しがちな栄養素だけではなく、肉体疲労に役立つクエン酸や、精神的な疲労に効果が期待できるパントテン酸やマグネシウム、カルシウムなども積極的に取り入れていくことで夏バテの予防が期待できます。
夏バテ対策におすすめの食材
夏に不足しがちなビタミンB1、そしてミネラル分(ナトリウム、カリウム、マグネシウム)、肉体疲労や精神疲労に効果が期待できる栄養素をそれぞれ豊富に含む食材をご紹介いたします。
栄養素名 | 多く含まれる食材 | 食べ方のポイント | 簡単に摂るポイント |
ビタミンB1 | 【肉類】 豚ヒレ肉、豚モモ肉、ハムなど 【魚介類】 うなぎの蒲焼、タラコなど 【豆類】 えんどう豆(ゆで)、大豆(ゆで)など 【種実類】 松の実(いり)、ひまわりの種(フライ・味付け)など 【穀類】 玄米ご飯、胚芽精米ご飯など 【その他】 ヒラタケ、株のぬか漬け(根・皮むき)、大根のぬか漬け(根・皮つき)、あま海苔(焼き海苔)など |
・アリシンを多く含む玉ねぎやにら、にんにくなどと一緒に摂取するとビタミンB1を長く利用できます。 | ・豚肉を食べる ・ご飯を玄米、胚芽精米に変える |
ナトリウム | 【調味料】 食塩、淡色辛味噌(米)、甘みそ(米)、うす口醤油、濃口醤油 【だし】 固形ブイヨン、ほんだし 【魚介加工類】 からし明太子、イカの塩辛、スジコ、タラコ、アサリの佃煮 【漬物】 梅干し、高菜漬け 【その他】 こぶ茶(粉末) |
・取りすぎ注意 | ・多くの加工製品に含まれるため、あまり意識的に摂らなくても良い。 |
カリウム | 【野菜類】 ほうれん草、春菊、トマトジュース 【果物類】 バナナ、キウイフルーツ、りんご、干し柿 【芋類】 里芋、じゃが芋 【豆類】 糸引き納豆 【海藻・きのこ類】 ひじき(乾)、エリンギ 【魚類】 サワラ、マカジキ、カツオ |
・野菜類や果物類に多く含まれるため、それらを積極的に食べる | ・トマトジュースを飲む(ナトリウムと一緒に摂るのはあまりよろしくないので、食塩無添加のものを選ぶ) |
カルシウム | 【乳類】 牛乳、プレーンヨーグルト、プロセスチーズ 【魚介類】 干しエビ、ワカサギ、丸干しイワシ、ししゃも(生干し)、うなぎの蒲焼、しらす干し(半乾燥品) 【豆類】 木綿豆腐、糸引き納豆 【野菜類】 モロヘイヤ、小松菜、大根の葉、水菜、青梗菜(ちんげんさい)、切り干し大根 【その他】 ひじき(乾)、いりごま |
・乳製品や小魚などに多く含まれるが牛乳のカルシウムが吸収率が良いとされているので、牛乳から積極的に摂取する。 ・カルシウムの吸収を手助けするビタミンD、吸収されたカルシウムを骨にとりこむビタミンKと一緒に摂取すると良い |
・牛乳を飲む ・牛乳が飲めない人は飲むヨーグルトや小魚で摂る |
マグネシウム | 【種実類】 アーモンド(フライ・味付け)、カシューナッツ(フライ・味付け)、落花生(いり) 【穀類】 そば(ゆで)、玄米ご飯、胚芽精米ご飯 【豆類】 大豆(ゆで)、豆乳(無調整) 【魚介類】 丸干しイワシ、干しえび、キンメダイ、カキ 【海藻類】 ひじき(乾) 【野菜類】 ほうれん草 つるむらさき |
・マグネシウム1、カルシウム2〜3の比率で摂ると良いと言われている | ・ご飯を玄米か胚芽精米に変える ・落花生を食べる |
パントテン酸 | 【魚類】 子持ちガレイ、トラウトサーモン(ニジマス・海面養殖)、ししゃも(生干し) 【肉類】 鶏レバー、豚レバー、鶏のささみ、鶏胸肉(皮つき) 【きのこ類】 ヒラタケ、エリンギ、なめこ 【野菜類・くだもの】 アボガド、モロヘイヤ、カリフラワー 【その他】 糸引き納豆、鶏卵 |
– | ・鶏肉ときのこ類に多く含まれるため、それらを食材として加える。 |
クエン酸 | 【果物類】 レモン、ライム、グレープフルーツ、いちご、パイナップル、キウイフルーツ、アセロラ、みかん 【調味料】 お酢、黒酢 【その他】 梅干し、ハイビスカス、ローズヒップ |
・ビタミンB群と合わせてとると良い ・クエン酸はこまめに摂取する ・糖質と一緒に摂取する |
・砂糖漬けレモン ・アセロラドリンクや酢飲料を飲む ・グレープフルーツを食べる ・梅干しを食べる |
夏バテに良い飲み物の飲み方のポイントとは?
夏は発汗により水分と塩分をはじめとするミネラル(汗にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどが含まれています)が失われやすい季節です。
そのため、まずは細めな水分補給が大切です。まずは水分補給の時には次のようなポイントに気をつけてみてください。
水分補給で気をつけるポイント
- 量の目安としては、1日1.5ℓ〜2.5ℓの水分を摂るように心がける
- 1回に大量の水分補給をすると血液が薄まってしまう可能性があるため、細めに何度も水分をとる
- 寝る前と寝起きなど水分が不足しやすい時間帯にしっかりと水分をとる
- 夏はミネラルも欠乏しやすいため、ミネラルを多く含むスポーツドリンクなどを活用する
また、ミネラルも発汗により不足しがちになりますので、それらをしっかりと補うようにミネラルを含む水分を摂るようにすると良いでしょう。
夏バテ対策におすすめの飲み物3選
主に水分と一緒にナトリウムやカリウムなど不足しがちなミネラル分、またパントテン酸など疲労回復にも役立つ栄養素が含まれる飲み物を飲むと良いでしょう。
夏バテ対策として使えるオススメの飲み物を3つと、おすすめな理由、そして飲む際の注意点などをご紹介いたします。
※スポーツドリンクは一般的なので、それ以外でのおすすめの飲み物をご紹介します。
飲料名 | おすすめポイント |
ココナッツウォーター | ・ナトリウム(塩分)に次いで不足しやすいカリウムをどの飲料よりも豊富に含む (例)ココナッツウォーター:カリウム629mg、ポカリスエット:カリウム20mg |
トマトジュース | ・不足しがちなビタミンB1と、ミネラル分(カリウム・マグネシウムなど)が豊富に含まれている。 |
熱中対策水 | ・汗に近い成分(水分とミネラル分)を摂取できる。 ・肉体疲労に効果が期待できるクエン酸を豊富に配合 ・カロリーゼロ |
まとめ
いかがでしたか?
夏バテは今回ご紹介させていただいた通り、日頃の食生活などを改善することによって、予防することができます。夏バテは無気力になったり、私たちの生活の質を落とす厄介なモノ。しっかり予防して夏を楽しみましょう。